人付き合いは「持ちつ持たれつ」の関係で進んでいきます。お互いに迷惑をかけあいながら、付き合いを続けていくものです。何かしてあげたからといって、すぐにお返しを期待するのは下品です。
にもかかわらず、世の中には「恩着せがましい人」がいます。何かあるたびに、その場でお礼をしてもらわないと気が済まないという人です。
恩着せがましい人と一緒にいると、友達付き合いが商売の関係のように思えてきます。何かにつけお礼を求められるので、関係が殺伐としてしまいます。
では、恩着せがましい人と上手に付き合っていくにはどうすればいいのでしょうか。恩着せがましい人の特徴や心理について、詳しく見ていきましょう。
恩着せがましい人の特徴・心理・対処法とは?
必ず見返りを求めてくる
人から親切にしてもらうと、お礼をしたくなります。親切をしてくれた人の優しさに対して、感謝の気持ちを伝えたくなります。
しかし、お礼をするより先に「見返り」を求められてしまうと、話は逆です。感謝の気持ちが一気に消えてしまいます。「見返りが欲しくて親切にしてたの?」と白けた気持ちになってしまいます。
親切に見返りを求めるのは、「恩着せがましい人」の大きな特徴です。恩着せがましい人から親切にしてもらっても、見返りを要求されるので素直に喜べません。
たとえば、仕事でちょっとした忘れ物をしてしまったとしましょう。書類への記入が必要な場面で、ペンを持ってくるのを忘れたとします。
すると、横にいた同僚がすかさずペンを貸してくれました。さりげない親切に、感謝の気持ちが湧きあがります。「ありがとう!いつかお返しさせてもらうね」と、お礼の言葉を伝えました。
後日、ペンを貸してくれた同僚が何やら不機嫌な様子で話しかけてきました。「あの時のお礼、まだしてくれてないよね」と、ペンを貸したことの見返りを求めてきたのです。
意外な言葉に、思わず耳を疑ってしまいました。たしかに「お返しさせてもらうね」とは言いましたが、向こうから見返りを要求されると嫌な気持ちになってしまいます。
ペンを貸してくれた同僚への印象は、「親切な人」から「恩着せがましい人」へと一変してしまいました。要注意人物として警戒するようになったのは言うまでもありません。
感謝の言葉を過剰に求める
親切にしてあげた人から感謝されると、幸せな気持ちで胸がいっぱいになります。たとえば電車でお年寄りに席を譲ったとき、「ありがとう」の一言をもらうだけで一日中幸せに過ごせます。
感謝の言葉は、ほんの一言で構いません。たった一言の「ありがとう」でも、普通の人は十分幸せになれます。しかし、恩着せがましい人の考え方は少し違います。
恩着せがましい人は、親切に対する感謝の言葉を過剰に要求します。たった一言の「ありがとう」では満足できないのです。
たとえば、会社で事務仕事が時間内に終わりそうになかったところ、先輩が助け船を出してくれた場合を例に考えてみましょう。
先輩がデータ入力を手伝ってくれたおかげで、何とか時間内に仕事を終えることができました。感謝の気持ちを伝えるため、心を込めてお礼の言葉を言いました。
先輩が普通の人であれば、後輩からのお礼の言葉を素直に受け取ってくれるはずです。後輩の感謝の気持ちを理解したうえで、仕事の進め方など必要なアドバイスをすることでしょう。
しかし先輩が恩着せがましい人だと、少し面倒なことになります。後輩のお礼の言葉に対して、難癖をつけ始めるのです。
後輩「今日は本当にありがとうございました!」
先輩「…ここまで手伝ってあげて、その程度の言葉しか出てこないの?」
後輩「えっ?」
先輩「『この御恩は忘れません』とか言えないの?」
手伝ってもらった手前、なかなか言い返すことができません。先輩の理不尽な非難を我慢するしかなくなってしまうのです。
頼んでもいないことをしてくる
恩着せがましい人には、「頼んでいないことを勝手に手伝ってくる」というパターンもあります。頼んでもいないことを勝手にしておいて、恩はしっかり売ってくるのです。
頼んでないことをされただけなので、恩を返す必要などありません。にもかかわらず恩だけ売ってこられるので、非常に困ってしまうのです。
たとえば、彼女に少し恩着せがましいところがあるカップルを例に考えてみましょう。彼女は何かにつけ、彼氏の世話を焼こうとします。しかし、ピントが少しずれてしまっています。
彼氏の部屋が汚れているわけではないのに、必要以上に掃除をしようとします。彼氏は毎日しっかり自炊をしているのに、おかずを作って持ってきます。
世話を焼いてくれる気持ちはありがたい一方、頼んでいないことなので「ありがた迷惑だ」というのが正直なところです。「そこまでしなくていいよ」とやんわり伝えても、分かってくれません。
ありがた迷惑に感じている彼氏は、素直に「ありがとう」と言うことができません。そんな彼氏の態度に彼女も不満を感じ、2人の関係にすれ違いが生じ始めるのです。
頼んでもいないことをしてこられると、やはり困ってしまいます。親切心からの行動であることが分かるので、なおさら対応が難しくなります。
ピントのずれた親切をしてくる彼女に対しては、どう接すればよいのか途方に暮れてしまいます。途方に暮れているうちに、つい彼女のことを「恩着せがましい人だな」と思ってしまうのです。
鈍感で他人の本心に気づくことができない
恩着せがましい人には、他人の気持ちに鈍感だという共通点があります。恩着せがましいと思われていることに気づけないので、事態がますます悪化していくのです。
先ほど例に挙げた「恩着せがましい彼女」を例に考えてみましょう。
そもそもピントの外れた親切をする時点で、他人の気持ちに鈍感だといわざるを得ません。さらに厄介なことに、「恩着せがましい」と思われていることにも鈍感なのです。
彼女は一生懸命、部屋の掃除や料理をしようとします。しかし彼氏は、掃除も料理も自分でできます。彼女にしてほしいとは思っていません。
彼氏は「掃除や料理はしなくていいよ」ということを彼女にやんわり伝えます。しかし他人の気持ちに鈍感な彼女は、彼氏の思いに気づくことができません。
彼氏が彼女のことを「恩着せがましい」と思い始めても、彼女はやはり鈍感なままです。恩着せがましいと思われていることに気づかず、ただ彼氏が冷たくなったと不満に思うだけです。
2人の関係が気まずくなり始めても、彼女は彼氏の冷たさを責めることしかしません。彼女自身の恩着せがましさを反省することはないのです。
彼氏を一方的に責め続ける彼女の態度は、「恩着せがましい」という印象をさらに強めてしまうことになります。彼女の想像力のなさが、事態を悪化させていくのです。
恩着せがましい人の心理とは?
他人のことが気になって仕方ない
恩着せがましい行動を取ってしまう人の根底には、「他人のことが気になって仕方ない」という心理があります。
恩着せがましい人の自分勝手な行動を見ると、他人のことなどまったく考えていないようにも思えます。しかし実は、他人ばかり気にすることこそが「恩着せがましさ」の原因なのです。
普通の人が親切をするとき、「親切をした相手の喜ぶ顔が見たい」と思っています。一方で恩着せがましい人は、「親切な人だと思われたい」と考えます。
普通の人の「相手の喜ぶ顔が見たい」という考え方は、自分の気持ちに軸を置いています。「親切にしたい」という自分の気持ちに素直に行動しているのです。
「親切にしたい」という自分の気持ちが満たされれば、それで満足できます。相手のリアクションは重視していません。だからこそ、ほんの一言「ありがとう」と言われるだけで幸せなのです。
たとえば電車でお年寄りに席を譲った場合、席に座ったお年寄りが「ホッ」とした表情をうかべてくれるだけで満足しています。「ありがとう」と言われるのは、嬉しいオマケなのです。
一方で、恩着せがましい人の「親切な人だと思われたい」という考え方は、相手の気持ちに軸を置いています。相手から良く思われるためには「親切にしなければならない」という発想です。
相手から良く思われることが目的になっているので、リアクションを求めてしまいます。思い通りに感謝の言葉をもらえないと、満足できないのです。
お年寄りに席を譲った例で考えると、恩着せがましい人のゴールは「お年寄りからお礼を言われること」になってしまいます。相手の気持ちに軸を置いた結果、自分勝手な発想になっています。
恩着せがましくなってしまう原因は、他人の気持ちばかり気にすることにあります。他人の気持ちに軸を置いた行動ばかり取っていると、結果的に自分勝手な振る舞いをしてしまうのです。