定期的な1on1ミーティングをおこなう
部下が突然辞めるのを防ぐためには、部下の仕事状況や心情を把握しておく必要があります。そして不平不満やストレスを吐き出させて改善していくのが良いでしょう。
そこで多くの会社がおこなっているのが1on1ミーティングです。上司と部下が1対1で、1時間ほど面談をおこないます。
通常は半期に1度ほどで、人事評価に関する内容が多いでしょう。しかし上司が大切にするべきことは、仕事の話よりも個人的な話に焦点を当てることです。
従来の面談とは『上司の時間』となります。しかし1on1は『部下の時間』なのです。8割は部下が話しているような状態が好ましいでしょう。
そこで1on1ミーティングでとくに重要となるテーマを紹介します。ここで部下と信頼関係を築くことがビックリ退職を防ぐことになるので参考にしてください。
まずは場を和ませる意味も込めて、プライベートな話から始めてください。緊張で何も言えない雰囲気では何も聞き出せません。
『最近何かはまっていることはある?』
『スポーツ観戦は今でもよく行くの?』
『1人暮らしは慣れた?』
このような当たり障りのない話が良いです。あまりプライベートな話まで介入すると、不快になる部下もいるのでバランスも気をつけてください。
続いては、部下が抱えている負を取り除くようにしましょう。仕事でもプライベートでも良いので『悩み』『不安』『困惑』『怒り』などの感情がないかを尋ねてください。
もし部下が言いにくそうにしていたら、先に上司自身の話をしましょう。このとき長々と話さずに5分以内におさめることを意識すると良いです。
『最近困っていることない?私は来月の総会で数字の発表があるのが、今から不安なんだよね。資料作りとも意外と手こずっていてね・・。』
このように上司の負を話すことで、部下が内に秘めている負も吐き出すことができるかもしれません。今の気分や気がかりなど軽いものでも良いのでヒアリングしていきましょう。
また身体的な体調についても確認しておくと良いです。不調や病気があるのであれば、きちんと理解をしておく必要があるので、聞いておくようにしてください。
続いては仕事の話です。今期や来期の具体的な反省や課題を聞いていきましょう。
『今期で得たもの』
『ミスや反省点』
『原因と改善点』
『気づき』
『目標と課題』
このような内容は、本来は査定や昇進などの評価をするものです。しかし、辞める意志がある場合の見抜くポイントにもなるでしょう。
心のどこかで辞めようと考えている場合は、経験・考察・振り返りに具体性がありません。事前準備もしていないので、話も支離滅裂です。
通常は昇給や昇進のために自己アピールに必死なはずです。そこには、部下のやる気が見えてくるでしょう。しかし、辞める意志がある部下には覇気がないのです。
1on1自体に興味がなくなり、上司に期待されることも希望していません。根底に『どうせ辞める』という意識が隠れているわけです。
話していると、上司は見抜くことができるはずです。むしろ見抜くべきだといえるでしょう。目を見て真剣に話す姿勢を見極めてみてください。
優秀な人材ほど放置しない
部下の中にも『優秀な部下』と『手のかかる部下』がいますよね。優秀な部下は放置していてもテキパキと仕事をこなしていくでしょう。上司が口をはさむまでもないと遠慮してしまうことも多いです。
反対に手のかかる部下に目も口も手も出てしまいます。気にしていないと心配なので、放置しておくことができないのです。
これは兄弟でもよくある現象です。優秀な兄と手のかかる弟。親目線で兄は大丈夫だと過信して、弟ばかりに手をかけてしまいます。
そうすると優秀な兄は、
『できる兄を演じ続けなければならない』
『弟ばかりに愛情が注がれている』
『自分は何をしていても関心がない』
と感じてしまい、結果として親から離れていくでしょう。また優秀を維持していた反動から、ぐれてしまうような兄だっています。
これと同じように優秀な部下は、放置しているとストレスが溜まり離れてしまうのです。優秀な部下こそ、コミュニケーションをしっかりとる必要があるといえます。
失いたくない存在だからこそ、しっかりと配慮してください。そして不満や課題について、一緒に共有するようにしましょう。
上司と部下の間に信頼関係を作る
信頼関係を作るのは、簡単なことではありませんし時間のかかることです。しかし信頼関係を作ろうとしている行為そのものが部下には伝わります。
当たり前のことですが、『約束を守り抜くこと』が基本です。上司として有言実行し、人に対して平等でブレない心を持ちましょう。
その積み重ねが信頼へとつながります。信頼関係ができることで、部下は上司についていこうとするでしょう。上司を目標にして踏ん張るものです。
また退職をするときにも、前もって申告する人も多くなります。突然の退職届けに驚くということも、確実に減るものです。
信頼されていないと『何を言っても無駄』だと認識されます。そのため突然辞めると言われることになるビックリ退職が起こるのです。
得るものや満足度を常に追求する
人は目的が達成されると、向上心がなくなってしまうものですよね。そこそこの現状に甘んじてしまうことで、つまらない仕事になってしまうでしょう。
そこで大切なのは、定期的に部下が会社や仕事で得るものや満足度を一緒に追求することです。向かう先のものを設定して、そこに歩む道筋を立てましょう。
ゴールのないマラソンでは、途中で棄権してしまいます。走る意味が自分自身で見いだせなくなってしまうからです。
都度ゴールを設定し、部下がやりがいを持って仕事ができる環境を整えてください。そうすれば他に目を向けずに仕事に精進するでしょう。
新しいことにもチャレンジさせる
部下も毎日同じことの繰り返しでは、仕事にマンネリを感じてしまいます。メリハリをつけて仕事ができるように現状維持できることと、新しいことをバランスよく配分してください。
新しい仕事にチャレンジさせることは、部下への『期待』でもあります。期待されていると部下のモチベーションも上がってくるものです。
成長のためにも、刺激を与えるためにも、新しいことにチャレンジさせていきましょう。それが離職率を減らすことにつながるのです。
意見の行く先を多数用意しておく
突然辞めるという部下は、ある程度サインを出してきた場合が多いです。結局は上司がサインに気がつくことができず、対応することができなかったのでしょう。
それには上司と部下の関係や相性によっても、サインに対する反応が変わります。そこで部下の意見や感情を複数の上司で共有できるようにしておくと良いです。
その中に気がつける上司がいれば、すぐに手を差し伸べて対応することもできます。相談して理解してくれるだけでも状況は変わってくるでしょう。
たとえば、
- 1on1を時々上司2名でおこなう
- 別の上司とも面談の機会をつくる
- アンケートや意見を社内メールで送信できるシステムをつくる
というようなことがあります。
上司との相性が悪いというだけで、会社を辞めることになってしまうのは部下も可哀想です。また配慮していても気がつけないことは、人間であれば仕方のないことでしょう。
1人の部下に対して多くの上司がサポートできる体制を整えておくのも突然の退職を防ぐ方法です。組織全体でビックリ退職をなくすよう努めてください。
業務外のイベントに消極的になったら注意
会社には、業務外のイベントも多数ありますよね。このような時間も仲間の絆を強くする大切なものでしょう。またストレス発散の良い機会にもなります。
- 歓送迎会
- BBQ大会
- 懇親会
- 創業パーティー
このような任意であるようなイベントでも多くの人が参加をするでしょう。しかし辞める意向がある人は、イベントに消極的になる傾向があります。
『ちょっとその日は・・』
『最近体調が・・』
何かと理由をつけて断る場合は、注意が必要です。なるべく話をする機会を多く設けて、原因を見つけて解消するようにしてください。
人事配置や部署の見直しを定期的に正確におこなう
部下が退職を申し出るのは、どうしようもない最終手段であることも多いです。何度か上司にサインを出したけれど、何も現状が変わらなかったのでしょう。
上司が突然だと感じていても、部下にとっては長い苦悩の時間があるはずです。苦悩に気づいて人事異動や配置移動ができれば、退職は避けることができるでしょう。
- 性格や適性に合った仕事がしているのか
- 人間関係にストレスがないか
- 上司と部下の関係は良好か
- 部下の能力を活かしきれているか
苦悩に気づいたときはもちろんですが、定期的に見直しをする機会を作りましょう。部下が生き生きと仕事ができる環境を用意するのも上司の仕事です。
上司にとって部下を『異動』させることは、自分の評価を下げてしまうように感じます。できるだけ異動者を出したくないというのが本音です。
しかし、自分の立場を守ろうとする行為が部下を苦しめることになると心得ておきましょう。また結果として退職者を出してしまうと本末転倒だということも肝に銘じておいてください。
飲みにケーションも大切
1on1は社内で向き合ってコミュニケーションを取ります。上司が和やかな雰囲気を心がけていても、部下としては緊張して本心を話せないことも多いです。
そこで飲みニケーションも取り入れてください。飲みの席では無礼講だと上司が言えば、部下も少しずつ心を開いてくれるようになります。
お酒の力もあるので、普段言えないようなことも話してくれるでしょう。そこで負を解消できれば、退職の気持ちを静めることもできるのです。
またコミュニケーションを普段からとれな、部下の違いに気がつけるようになります。顔色や目の動きから心情を読み取れるようになるものです。
プライベートの時間を強要することはできませんが、可能な限り飲みの席で過ごす時間もとってください。そこで気づけることは多いです。
部下のサインに気がつけるかどうか
部下が出す『辞めるサイン』について、何か特徴があるとわかりやすいですよね。気がつくことができれば、退職を阻止できなくても心の準備や組織改正はできます。
『辞めたい』ではなく『辞める』と決意した後の特徴としては、何事も曖昧に濁すのが特徴です。明確なことを口にしなくなるでしょう。
『最近いろいろ忙しくて~』
『やりたいことはいろいろとあるんですけどね~』
『いろいろと準備も考えることも多くて~』
『いろいろ』という言葉で一色単にして曖昧に濁します。部下との1on1やコミュニケーションの中でも、いろいろ濁された場合には退職を心していた方が良いです。
すぐに取り入れてくれる環境作り
部下が不満を持っていて、それを上司に話してくれたとします。ここまでのプロセスで、部下は不満を口にしてスッキリとした気持ちになるでしょう。
しかし吐き出させたところで満足していては何も意味がありません。大切なのは、くみ上げたことへの迅速な対応力です。
たとえば、『部内の仕事効率が悪いのがストレス』だという声があったとします。そこで『大変だったね』と返答したとします。ここで部下の不満度は100から80くらいまで下がります。
さらに『この手順を変えて効率アップを図ろう』と上司が改善策を提案します。そうすると不満度は80から60くらいまで減少するでしょう。
ここで実行しなければ、不満は120まで上がってしまいます。きちんと実行に移すことで30まで減らすことができるのです。実際に改善されたときに不満度は0になるでしょう。
いつでも部下の意見に『耳を傾け』『改善を練り』『実行』というプロセスが整っていることが大切です。すぐに取り上げてくれる環境が部下のストレスを減らすことに直結します。
上司と部下の合意形成による安心感
部下が突然辞めるのを防ぐためには、上司と部下が合意形成できていることです。それが大きな安心感につながります。
合意形成とは、成果や課題に関して意見をすり合わせて同じ方向を見ることです。この形成がされていないと、上司と部下の関係は悪くなります。
そして部下の満たされない気持ちがストレスとなり、突然の退職につながるのです。合意形成をするには、やはり日頃の対話が必要となります。
1on1も含めて、常にコミュニケーションを図ることが大切なのです。時間を割いてでも対話を多くするようにしてください。
部下は退職サインを出している
『部下が突然辞める』ことの多くは、上司の一方的な見方です。部下からすれば突然ではなく、半年前ほどからサインを出しています。
『え?』と驚いてしまう退職が多い場合は、部下との信頼関係が築けていない証拠です。日頃から部下に対して興味を持ち、心身の管理までをおこなう努力をしてみましょう。
まずは上手く距離を縮めて接点を多く持つことです。上司が威張り散らすようなトップダウン経営の状態にならないように気をつけてくださいね。