配偶者やパートナーに暴力を受けたという被害報告は2015年の段階で5万件を上回り、今も増え続けています。
このような家庭内で起きる全ての暴力をドメスティックバイオレンス(通称:DV)と言います。
そして最近では、このDVという言葉は、配偶者やパートナーから暴力を受けた時に使用するのが一般的になっています。
DVは身体的な暴力のみならず、精神的、性的、経済的など色んな種類の暴力全てを指します。これは人権侵害であり犯罪です。
そのためDV防止法という法律も制定され、保護措置をとることも可能となりました。世間でDV防止の動きが強まっているのです。
しかし、大人だけでなく高校生や大学生などの若いカップルにも、交際相手から暴力を受けている人が増えてきています。これはデートDVと呼ばれ、DVと同じく大変深刻な社会問題の1つです。
デートDVは多感な時期の若いカップルの間で起こるため、恋人に嫌われたくない、離れたくないという思いが一層強いのです。そして、暴力を受け入れてしまう被害者がとても多いです。
そこで今回はこのデートDVとは具体的にどんな暴力のことを指すのか、そしてそこから抜け出すためにはどうしたらいいかについて解説していきます。
デートDVとは?
DVをする人間は暴力を振るった後、異常に優しくなったり自虐的になったりする傾向があります。もう二度としない、愛している、許してくれなどと言って情に訴えかけてくるのです。
大切な人にそんな風にされると、多くの人は次こそはやめてくれると期待し、この人には自分しかいないのだと許してしまうのです。しかし、DVによる暴力はそれでは終わりません。
反省したかと思いきや、その後も事あるごとにイライラし始め、また暴力を振るいどんどんエスカレートしていくのです。
そんなサイクルを繰り返していくうちに、被害者は暴力後の優しい健気な相手に依存するようになります。そして自分が気を付ければ良い関係でいられると暴力を受け入れ関係を続けてしまうのです。
DVは愛情ではありません。相手を支配しコントロールする手段でしかないのです。
特に若いカップルの間で起こるデートDVは、好きな気持ちが先行して喧嘩の延長線上だと我慢してしまう人が非常に多いです。
好きだけど怖い
辛いけど一緒にいたいから我慢している
交際している上でそう感じているのであればそれはデートDVです。殴られたり蹴られたりするだけが暴力ではなく、嫌な思いや怖い思いをさせられていたらそれは暴力なのです。
『自分はDVを受けている』という自覚を持たなければ、そこからはなかなか抜け出せません。まずどんなことがデートDVになるのか、そこから見ていきましょう。
身体的暴力
暴力と聞くと、多くの人が想像するのがこの身体的暴力です。殴ったり蹴ったりするのはもちろんのこと、髪を引っ張ったり胸ぐらを掴んだりするのも立派な身体的暴力です。
また物を投げつけたり、引きずり回したりするのもこの身体的暴力にあたります。
他にもタバコの火を身体に押し付ける、無理やりアルコールを飲ませる、刃物で傷つける、熱湯や水をかけるなどもそうです。このように加害者が被害者に身体的苦痛を与えるもの全てが身体的暴力となります。
ゆえに傷や跡が残っていなかったとしても、本人が痛みを感じそれに苦痛や恐怖を感じたのであれば、それは身体的暴力なのです。
精神的暴力
精神的暴力については特に本人も相手も暴力として認識していない場合が多いですが、これもれっきとした暴力の1つです。悪口を言われたり罵声を浴びせられたりして傷ついたことはありませんか?
また怒鳴られたり、無視されたり、命令されたりしたら誰だって嫌な思いをします。これも精神的暴力の1つです。他にも大きな音を立てて威嚇したり、SNS等で誹謗中傷したりするのもそうです。
そして精神的暴力となるのは、このようにあからさまなものだけではありません。行動を逐一チェックしたり、携帯を毎回確認したり、人間関係を制限したりすることも本人が苦痛だと感じれば精神的暴力です。
これらは悪気なく当たり前のようにしてしまう人が多いので注意が必要です。たとえ自分が苦痛を感じない行為であっても、相手が嫌がっていればそれは暴力なのです。
これらは愛しているからこその行為と受け取られやすいため、愛されているのだから我慢しようと思ってしまう人も多い暴力の1つです。
性的暴力
愛する人との性行為は本来であればとても幸せなものです。しかし相手を思いやり、大切にする気持ちを持っていなければ暴力になりうるのです。
例えば相手の気持ちや体調を考慮せず性行為を強要したり、性行為中に傷つけたり嫌がることをさせたりするのは性的暴力です。
また無理やりいやらしい本や映像を見せたり、カメラ等を使って性行為を撮影したりするのもそうです。そして避妊をしなかったり、中絶をさせたり、売春をさせたりするのも間違いなく性的暴力です。
特に女性にとって妊娠、出産はとてもデリケートでな問題です。にもかかわらずそれを弄ぶように性的な暴力をふるうことは決して許されることではありません。
性的暴力は女性にとってものすごい苦痛であり、大きな精神的ダメージも与えるものなのです。
経済的暴力
2人が交際をしていくにあたり、お金が必要になる場面は多々あります。その時にいつも自分だけがお金を払っていることはありませんか?
またお金を貸したのに全く返す気配が感じられなかったりしませんか?
そのような金銭的ダメージを負わせるのも暴力の1つです。また2人で生計を立てているのに自分は働かなかったり、あなたを無理に働かせたりするのも同じように経済的暴力です。
その場合にお金を取り上げたり、お金の使い道を細かく監視したり。勝手に散財したり、お金を隠したりするのも経済的暴力にあたります。
なかには相手に強制的に借金をさせられたという被害報告も多数出ています。
「デートDVかも?」って思ったら
ここまで読んできて、もしかしたらデートDVかもと思った人がいたら今すぐに対処しなくてはなりません。デートDVを始め、DVというのは早期発見早期対応が大切です。
なぜなら放っておくとどんどんエスカレートして後戻りできなくなり、大変な事態を招きかねないからです。
愛している人がDVだなんて…と思うかもしれませんが、それを見て見ぬふりをするのは誰のためにもなりません。
もしデートDVかも?と思ったら、あなたのためにも愛する人のためにもデートDVから抜け出すためにすぐに行動しましょう。
相手に「やめて!」とはっきり言う
まずは相手に「やめて!」とはっきりと言いましょう。言われなくてもやっている、それでもやめてくれないから悩んでいると言われそうですが、言い方はどうでしょうか?
はっきり拒否していますか?
やめてと言葉にしていたとしても、本気でやめてほしいことが相手に伝わっていなかったらやめてはくれません。相手はあなたを自分のものにしていたいから暴力をふるいます。
あなたが真剣に本気でやめてほしいということを伝えれば、いつもと違うあなたに相手は戸惑うはずです。
それが有無を言わさず暴力をふるっていた状況を変えるきっかけになる可能性も大いにあります。なので、まずはあなたが本気で嫌がっているということを態度と言葉で示しましょう。
デートDVの内容を理解する
これまでDVには大きく分けて4つに分けられる暴力があり、それぞれ具体的にどんな暴力がそれにあたるかを説明してきました。しかしこれはあくまでDVへの理解を深めるための説明する上でのカテゴリー分けであり、その例です。
なので、ここにあてはまらないからといってDVではないとは限りません。大事なのはあなたが辛い、悲しい、怖い思いをしていないかです。
あなたが相手から受けた行為によって苦痛を感じたのであれば、それは紛れもなくDVです。特にデートDVは若さゆえにお互いにそれを暴力だと認識していないことが多いです。
相手のために我慢することが愛だとか、相手を愛しているから何をしてもいいなんてことは絶対にありません。
もしあなたがデートDVを受けているなら、しっかりデートDVというものと向き合い、理解することに努めてください。
そして決してデートDVを受け入れてはいけません。DVを受ける側が悪いということはないのです。
デートDVはしない約束をして、破ったら別れる
多くの人はデートDVを受けても別れたくないからと受け入れてしまいます。
そしてそれがエスカレートしても、相手には自分しかいない、いつかはやめてくれるなどと思い込み、別れを選択できずにいます。
しかしそう思っていては、相手は一向に暴力をやめません。そういうスタンスのあなたに甘えて暴力をし続けます。それではいつか大変なことになりかねません。
相手もDVをし続けていたら絶対に幸せにはなりません。それはあなたがそばにいても同じことです。なので、自分のために相手から離れられないなら、相手のために離れる覚悟を持ちましょう。
もう二度とデートDVはしないと約束を取り付け、相手が破ったら別れてください。そうなった時、必ず相手の心境に何かしらの変化はあるはずです。それがDVをやめる糸口になるかもしれません。
別れても付きまとわれる場合、女性センター、警察に相談
デートDVから逃れるため、別れを告げてもなお付きまとわれるようなら、女性センターや警察に相談してください。そこまできてしまうともうあなただけの力ではどうにもできません。
別れることはできても、誰にも相談せずそのままにしていると相手が納得できずに付きまとってくる可能性が非常に高いです。エスカレートして事件に発展してしまったケースも出てきています。
まずは両親や友人、学校の先生など身近で頼れる人に相談しましょう。それでも守り切れない場合は必ず女性センターや警察に相談し守ってもらいましょう。
そして相手に自分がやったことを理解させる必要があるのです。そうしなければデートDVは終わりません。
デートDVは身近な問題
私たちは時に恋人を傷つけるようなことを言ったり、してしまったりします。突発的に相手が傷つくことを言ってしまったり、悪気がなくしてしまったりという過ちは誰にでもあることです。
そういう時は許す心を持つことももちろん大事です。しかし耐えられないほどの苦痛を与えられたのであれば、それを受け入れてはいけません。
若いカップルで多いデートDVは精神的暴力と性的暴力だと言われています。特に束縛というのは誰でも持つ感情です。そしてそれは男性でも女性でも持つ感情です。
つまりデートDVは誰でも加害者あるいは被害者になる可能性のある、私たちにとってとても身近な問題なのです。
ぜひ自分は関係ないやとは思わずに、大切な人とお互いに自分を大切にできる素敵な関係を築いてください。